干支キュビズム /
絵画的抽出作業としての12年の習作
2011 卯
2011 卯
特徴的な形状となる部分だけを抽出して、可愛らしくも野生的な眼差しをメインに形態を再構成しています。そのしなやかなフォルムと繊細さ、素早さを線形による表現にて試みています。付け足したくなる要素が多いモチーフであるため、我慢して必要最低限を心がけて表現しています。
2012 辰
2012 辰
架空の動物であるがゆえに自由なイメージ、神秘的な偶像を意識しています。明確な形態を持たないためキュビズム本来の意味を持ち得ないかも知れませんが、可視化できない要素として時間とエネルギーを空間に付加しています。架空がもたらす想像、自由表現の難しさを体感するモチーフでもあります。
2013 巳
2013 巳
テクスチャーと自在な変形性にこだわり、その謎めいた生体を意識した表現を行っています。毒性、遭遇したくない恐怖など先入観の一切を排除して、機能的かつ神秘的な外皮の美しさのみを抽出し荒々しくファンタジックに表現しています。色彩のスタディをいくつか行っており、気に入った配色で濃淡のある2パターンを選びました。
2014 午
2014 午
シンプルな一つの形状(葉形状)のみで構成することでデザインを統一させる試みを行っています。軽快さと群れの美しさをイメージして、円環にすることで柔らかさやしなやかさ、一体感を付加しています。ポップな色付けで楽しさ、華やかさを加えてシンボリックに表現しています。
2015 未
2015 未
外皮の特性、特有の雰囲気を意識した構図です。モチーフとして多用されますが、身近なようであまり身近ではないので一般的に持たれている感覚、先入観をそのまま表出させています。柔らかく丸いイメージをあえて四角くフレーム化することで焦点をテクスチャーに絞り込む錯視的な視感覚の操作を行っています。
2016 申
2016 申
日本的な動物というイメージを意識して、和の象徴、様式に寄せたアイコン化を行なっています。ゆるいタッチの正方形のシンボルを縦に5マス区画して整然と並べることにより構成的な秩序を生み出しています。その見た目のギャップと視線の誘導による印象操作を試みています。
2017 酉
2017 酉
形体と色彩による遊びの表現です。形体特性を抽出して自由なプロポーションに組み直しています。バランスという特徴を重視しており、特にフォルムの美しさに注力した表現を行っています。鶏の持つ色彩と同じ色彩で異なる自然要素を配することで違和感を増し、存在を強調しています。
2018 戌
2018 戌
身近で愛らしい存在の全体を抽象化して、その集合体により特徴的な耳、一部分にフォーカスする構成で表現しています。午につづき、一形状による集合シリーズ第二弾としての作品になります。暖色系のファジーな着色により日常的で家族要素が強い存在としての示唆を試みています。
2019 亥
2019 亥
流線形のフォルムを物理的特徴として抽出しています。加えて親子の絆、自然と共に生きる野生の象徴として、環境を意識した表現を行なっています。信仰対象にも害獣にもなる身近な存在であり、無意識でも環境問題についてのバロメーターとなる重要な存在であることの示唆を試みています。
2020 子
2020 子
集まって暮らし活動する見えない世界のファンタジー、透明性を表現しています。都心の雑居ビルの一角、床下、天井裏をイメージしており、人間社会では忌み嫌われ排除される存在になりがちですが、そこに群がる知られざる生命の美しさ、偏執に対する再考への気付きを意識しています。
2021 丑
2021 丑
動物の持つ特有の皮膚の感覚、肉厚な重厚感を主に取り入れて表現しています。晩年のピカソ作品のオマージュでもあります。2020年にリマジナデザインを開設したこともあり建築的な立体と壁面にロゴマークも入れています。化身のような少女の存在も新しい試みとして表現しています。
2022 寅
2022 寅
力強さと鋭さ、柔らかさを兼ね備えた存在感へのアプローチを行なっています。その生息に関しての気配、潜行、木隠れといったキーワードを意識し、神秘的な縞模様を解き放つことで表現しています。色彩はすべてアースカラーとし、陰影により普遍性を持つカリスマチックな威厳に対する表現を試みています。
キュビズムといえば、パブロ・ピカソ、ジョルジュ・ブラックに代表される作品の表現手法になります。その詳細については各々解釈が異なると思いますが、当時はとても斬新で新しい芸術表現であったと言われています。私自身は大学時代に画家の山本浩二先生の講義を通じてキュビズムを学び、独自の解釈を加えながら建築表現の一環としてとても有効であると考え重要視してきました。干支を表現の対象物としたきっかけは単なる思いつきではありましたが、特別な思い入れもない決められた動物に対して、いかにその動物らしさ、その所以を抽出できるかの新しい試みは、物事の物理的な核心を捉える練習として大変意味のある作業であったと考えています。
2022年で12年となり干支を一周しました。毎年違った角度での表現を意識していたため統一感もなく自己表現としては薄いかも知れませんが、振り返ってみると動物そのものだけではなく、その年の自身の思いや考え、行っていたこと、社会的背景が反映されているなと感じます。