
蛇といって連想されるメデゥーサはギリシャ神話に登場する女神です。判断に至る一瞬の隙も与えず人々を石に変え思考力を奪う、そんなキャラクターは誰かが望む社会の基盤としっかり重なるような気もします。これまで描かれた彼女の絵画はどれも恐ろしい印象を持ちます。また無残に倒された絵画も多くあります。仏教でも天部に分類される毘沙門天、金剛力士などの仏さまは同種の役割として創造されたのだと思います。
超自然の偶像、絶対的な崇拝、そこに生まれる不可侵な規範、神話は本当に有用な無形文化なのか単なる支配ツールなのか…誰かの都合であり欲ではないか、あるいはそんな世界に対する警鐘なのか、その功罪について多くの疑問が残ります。
時代を超えて、民族を超えて人間社会は現代でもさほど変わらない状況です。大小さまざまな無意識の支配、作為が巧妙に隠された誘惑の波が毎日押し寄せてきます。ネット社会ではその手段と量が肥大化しています。
石になる前に、思考停止する前に、メデゥーサより先に私たちは考えなければなりません。悩める女神は戒めであり、きっとその気づきを与えてくれるのではないかと思います。
あけましておめでとうございます。本年度もよろしくお願いします。